東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)101号 判決
事実及び理由
一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。
二 第一引用例の記載内容が審決理由の要点(請求の原因三)2摘示のとおりであることは当事者間に争いがなく、第二引用例の記載内容のうち、同3(一)<イ>に摘示された点は当事者間に争いがなく、同<ロ>の摘示は成立に争いのない甲第二号証の二(第二引用例)によりこれを認めることができるから、第二引用例には同3(一)摘示のとおりの記載があるものということができる。
三 前記争いのない本願考案の要旨及び成立に争いのない甲第四号証の二(本願考案の昭和五七年八月二日付手続補正書)、第五号証(本願考案の出願公告公報)によれば、本願考案は、開閉子を自由回動可として軸支し、その回動範囲を制限する開き止め及び閉じ止め機構を設けることにより、(イ)右両機構により開閉子の左右反転を阻止し雌コネクタの適正な挿入を確保し(特に開き止め機構により雌コネクタの再挿入に適した下部押上指の位置を設定)、(ロ)開き止め機構の位置を適宜選定することにより雌コネクタの離脱に当り下部押上指による雌コネクタの適正な押上量を設定するとの作用効果を奏するものと認めることができる。
四 本願考案と第一引用例記載の発明との一致点及び相違点が審決の理由の要点4摘示のとおりであることは当事者間に争いがない。
両者の一致点について更に検討すると、前記争いのない事実、甲第四号証の二、第五号証及び成立に争いのない甲第一号証(第一引用例)によれば、本願考案において、雌雄コネクタの結合状態を得るためには、一対の規制板を構成し雄コネクタの両端に並設された端板(3)(4)間に互に対向方向に自由回動可に軸支された左右一対の開閉子(8)、(10)を開方向に回動した状態で、雌コネクタを規制板間に嵌挿すると、その下面両端が左右の開閉子の下部に突設された押上指(7)、(7)を押下げながら開閉子を閉方向に回動させ、雌コネクタが雄コネクタに完全に嵌挿されると雌コネクタの上部両肩に設けられた係合受部(13)、(13)に開閉子の上部に設けられた上部係合爪(6)、(6)が係合し、その際右下部押上指が雌コネクタの下面両端に接して押上待機状態となり、次に両コネクタの右結合状態を解くためには、開閉子を開方向に回動することにより、その上部係合爪と雌コネクタの係合受部の係合状態が解除され、その際右のように押上待機状態にあつた開閉子の下部押上指が雌コネクタの下面両端を押上げること、一方、第一引用例記載の発明において、回路板(9)とコネクタ(6)の結合状態を得るには、一対の側方起立部材(2)、(3)に互に反対方向に回動可にピン(14)、(15)で軸支され、かつ復元ばね(24)によつて回路板を保持する方向に付勢されているフツク(12)、(13)を開方向に回動した状態で、右起立部材の各溝(11)、(11)に回路板を嵌挿すると、その肩部(20)、(21)が各フツクの後部に突設された指(18)、(19)を押下げながらフツクを開方向に回動させ、回路板がコネクタに完全に嵌挿されると回路板の切欠部(ノツチ)(16)、(17)にフツクの先端付近に突設された歯(12a)、(12b)が係合し、その際フツクの指が回路板の肩部に接して押上待機状態となり、次に回路板と右コネクタの結合状態を解くためには、フツクを開方向に回動することにより、フツクの歯と切欠部の係合状態が解除され、その際右のように押上待機状態にあつたフツクの指が回路板の肩を押上げること(フツクの指の押上機能については第一引用例に「フツクのハンドル22、23を互いに近接する方向(開方向)に移動すると、回路板の端部をコネクタ6から退去させる力が指18、19へ与えられる。」(訳文五頁八行ないし一一行)と記載されている。なお、同引用例の実施例によれば、フツクには回動用のハンドル(22)、(23)が設けられている。)が認められる。
この事実によれば、本願考案の要旨(a)は、開閉子(第一引用例記載の発明のフツクに相当する。)が自由回動可に軸支されている点を除き(同引用例では前記のとおりフツクは復元ばねにより回路板を保持する方向に付勢されている。)、すべて同引用例に記載されているものということができる。
五 そこで、第二引用例記載の考案について検討する。
1 第二引用例には審決の理由の要点3(一)に摘示された内容の記載があることは前記のとおりであるが、原告は、同引用例のフツク片(5)の下部に設けられた舌片(54)が装着された電気部品(8)を押上げる機能を有することを否定する。しかし、前記のように、本願考案において雌コネクタに対し押上機能を有する開閉子の下部押上指(7)、(7)は、第二引用例を俟つまでもなく第一引用例のフツクの指(18)、(19)として開示されているところであるので、第二引用例記載の考案の舌片の押上機能の点はしばらく措いて、同考案の構成及び効果について検討を進める。
2 前記甲第二号証の二、成立に争いのない甲第二号証の一(第二引用例の明細書によれば、同考案は、係合部(52)と舌片(54)よりなる凹状の空間部を有し自由回動可に軸支された装着用フツク片(5)とその回動範囲を制限する後記のようなストツパー(14)、(15)を備えた電気部品装着装置に係るもので、フツク片を開方向へ回動し、部品(8)中右凹部に対応した形状の凸部(7)を右凹部に係合させながらフツク片を閉方向に回動して部品を基板(1)のソケツト(2)に装着し、フツク片を開方向へ回動して右凹部と部品の凸部との係合を解き、部品をソケツトから抜き去るものであること、従前右のようなフツク片を備えた電気部品装着装置では開き止め及び閉じ止め機構(ストツパー)がなかつたので、部品装着の際、フツク片が内側或は外側に不必要に倒れることがあり、このような場合手動操作によつてフツク片を所定位置に設定した後に部品を装着しなければ、部品はフツク片の係合部又は舌片に当たるため、装着作業が困難であつたこと、そこで、第二引用例記載の考案では、別紙図面(三)の第1図、第3図のように舌片が基板に当接する部分に閉じ止め機構(ストツパー(14))及びフツク片の下部に開き止め機構(ストツパー(15))を設けたもので、右両機構により「フツク片が所定の角度範囲内に位置せしめられるので電気部品を基板のソケツトに装着する場合のフツク片の位置調整が簡単あるいは不要であり、電気部品の係合が簡単であり実用的効果が大きい。」(甲第二号証の一の五頁二〇行ないし六頁四行)との作用効果、即ち前記三(イ)に述べた開閉子(フツク片)の左右反転阻止による電気部品の適正な挿入の確保、開き止め機構による同部品再挿入に適した舌片の待機位置の設定という効果を奏しているものと認めることができる(右の効果は電気部品の挿入に関するものであるから、舌片が押上機能を有すると否とにかかわらず奏せられるのである。)。
六 そうであれば、第二引用例記載の考案の舌片(54)が押上げ機能を有するか否かについて判断するまでもなく、前記のとおり開閉子が自由回動可に軸支されている点を除き本願考案の要旨(a)と一致する第一引用例記載の発明の構成に、前認定の第二引用例記載の考案のフツク片(開閉子に相当する。)を自由回動可として軸支し、かつその回動範囲を電気部品の着脱に必要な範囲に制限する開き止め及び閉じ止め機構を設ける構成を適用し、本願考案の構成(a)(b)(c)を得ることは当業者としてきわめて容易になし得るものというべきである。また、これにより前記三(イ)の効果はもとより、開き止め機構の位置を適宜選定することにより、押上機能を有する下部押上指(第一引用例記載の発明の指に相当する)の適正押上量を確保することができるという前記三(ロ)の効果をも併わせ奏し得るということも当業者として当然予測し得る範囲内のものということができる。
七 以上述べたところによれば、本願考案が第一引用例記載の発明及び第二引用例記載の考案に基づいてきわめて容易に考案することができたとの審決の判断は正当であり、原告の取消事由は理由がない。
よつて、本訴請求を失当として棄却する。
〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。
(a) 雄端子を植設した雄コネクタの基板部左右に雌コネクタの両側を規制する一対の規制板を立設し、該各規制板は前後に間隔的に並設した二枚の端板にて構成し、該各並設端板間には左右一対の開閉子を介装して互いに対向方向に自由回動可に軸支し、該左右開閉子には該開閉子の閉方向への回動にて雌コネクタと係合状態となり同開方向への回動にて同係合解除状態となる上部係合爪と、該開閉子の閉方向への回動にて押上待機状態となり同開方向への回動にて上記雌コネクタを上記左右規制板を案内として押上げる下部押上指とを夫々突設すると共に(b)該左右開閉子と雄コネクタとに該左右開閉子の上記開方向への反転を阻止する開き止めと、該左右開閉子の上記閉方向への反転を阻止する閉じ止めとを設け開方向及び閉方向への定量回動を確保する構成としたことを特徴とする(c)雌雄コネクタの接続機構(別紙図面(一)参照)。
〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。
別紙 (一)
<省略>
別紙 (二)
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別紙 (三)
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別紙 (四)
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